『いつか』ダイアローグ・イン・ザ・ダークによるワークショップ参加レポート

2019/03/18いつかblog

『いつか』ダイアローグ・イン・ザ・ダークによるワークショップ参加レポート

出演者8名、演出の板垣さん、振付の下司さん、公式ライターの桑畑さんが参加

「さあ、ここからは暗闇に入ります! 目が慣れることもないくらいの、本当に真っ暗な世界です」
 2人のスタッフにアテンドされて、白い杖を頼りに恐るおそる歩み出る『いつか〜one fine day』のキャスト8人、そして演出の板垣恭一と振り付けの下司尚実。分厚いカーテンをくぐると、そこには深く広い闇が広がっていました。

3月5日、初の歌唱稽古を終えた翌日。参加したのは、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というワークショップです。「~暗闇の中の対話~目以外のなにかで、ものを見たことがありますか?」というコンセプトのもと、参加者は光を完全に遮断した広い空間の中へ。暗闇のエキスパートである視覚障がい者のスタッフに導かれながら、グループで様々なシーンを体験するというものです。1988年にドイツの哲学者が考案し、これまで41か国で開催。日本では1999年以降、東京と大阪で開催され、コミュニケーションのありかたについて考える機会として、企業の研修などにも活用されてきました。

 今回『いつか』の出演者と制作者が「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を体験をすることにしたのは、プロデューサーの宋元燮の発案です。目的の一つは、ヒロインのエミが、目が不自由な人だという設定であるため、闇に生きる感覚を経験してみること。そして、もう一つは、宋自身がかつて同ワークショップに参加したことから生まれた、ある思いからでした。
「自分が感じたことをどう表現するのか、何を見せようとするのか。暗闇を体験して、少しクリアになったことがあるんです。だから、役者も『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』をやってみたら、ひとつ扉が開くかもしれないな、と」

 真っ暗な世界で、視覚以外の感覚を使って感じ、声を掛け合い、話し合うこと約2時間。アテンドスタッフに導かれながら、再び光あふれる部屋に戻ってきたみんなは、すっかり明るい笑顔になっていました。

「本当に暗いのはダメで、手汗をかいた」(荒田至法)、「すごい泣きそうになった」(佃井皆美)と、闇の中で意外な素顔が見えた人もいれば、「音が染みるというのを感じた」(皆本麻帆)、「声から表情を想像して、普段使わないところが活性化された」(内海啓貴)と初めての感覚を語る人も。

また、「誰の顔色もうかがうことなく、自由に発言できた。見られることを考えないのが楽だった」(小林タカ鹿)、「建前を作ることなく開いている自分がいた」(和田清香)と、暗闇で心を開放することができたという感想もありました。

そんななか、みんなが共通したのは、お互いの距離の変化でした。
藤岡正明が「芝居で一緒になると、ちゃんとしなきゃって構えるところがあるけど、いきなりお互いがぐっと近づいた感じがする」と言うと、入来茉里は「みんなのこと、すごい好きになった!」

ほぼ初めましてだった8人の役者たちの心が一つになると同時に、個性を開け放つきっかけとなった「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。この暗闇での体験は、芝居にどんな化学反応を起こすのでしょうか――。

文:桑畑優香

    暗闇の中で参加者によって『いつか』をイメージして作られた粘土細工

  • いつか〜one fine day 公式サイト https://www.consept-s.com/itsuka/

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